『夜奔』(夜に逃れて)

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(1999)

監督:徐立功、尹祺
出演:劉若英(レネ・リュウ)黄磊(ホアン・レイ)尹昭徳(イン・ジャオトウ)戴立忍(ダイ・リーレン)    

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「アジアフォーカス・福岡映画祭2001」で上映され話題になった作品です。
同性愛を扱った内容ですが、キワな匂いはせず、切ない恋物語として誰の胸にもストレートに響くのではないかと思われます。
心理描写が繊細で、淡々としていながら起伏のある脚本も素晴らしい。
めっちゃ名作ですよー。ぜひご覧あれ。

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2人の男と1人の女が繰り広げる恋の話というと、三角関係?とも思うかもしれないけども、さにあらず。
この3本のベクトルは決して恋の名のもとには交わることなく終わってしまうのです。しかし見事に美しい「友情のトライアングル」を形作っている。その絶妙な距離感が素晴らしいです。
この物語は恋の物語であると同時に友情の物語でもあるの。そしてまた、大いなる孤独の物語でもある。
3人の主人公たちのそれぞれの立場に立ってみると、様相の違う3つの物語があるのを感じます。そのアンサンブルがこの映画の重層的な美しさを醸し出しています。

 

■苦悩の人:少東

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少東を主軸に思うとき、この物語は後悔と孤独の物語になる。
彼は林沖を愛している自分、というものを把握しきれず、結局、その気持を拒んでしまったことを後々、ずーーーっと後悔し続ける、というわりと救いようの無い悲しい運命を抱えちゃった人です。
性格的にも林沖に会うまで友達がいなかったとか、英兒しか手紙をくれる相手もいない、ということからもわかるように、あまり開放的なタイプではないので、ずーっと独りで悶々と悩んでいそうな人。
だから、彼の立場でこの物語を見ると、えらく悲しい。
「唯一のものを自分の臆病さゆえに手放してしまった」という過去の後悔にとらわれていて、今をぼんやりと過ごしている。その姿には生きているのか死んでいるのかさえ定かでない永遠の孤独を思う。

■情熱の人:林沖

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一方の林沖は、少東への想いを糧に、暗闇の中にも光を見出そうとする必死さ、というか、生命力のようなものを感じさせる人。
彼にとってこの物語は、叶わない恋を求め続けた情熱の物語なのかもしれない。
結局は潰えてしまう希望でも、林沖は希望をもつことを最後まで諦めない。恋の炎を燃やし尽くした人、という気がする。
その内なる情熱は、昆劇の『林沖夜奔』の劇中で間接的に観ている者にも伝わってくる。

静かで、熱く、抑えた中にも迸るように感じられる渇望がある。
結局は何も報われることなく林沖の一生は終わるのですが、その悲劇を嘆くより、彼の思いを汲んであげたいと感じる。精一杯やった、という部分では、きっと少東よりも彼は自分の人生を取り戻していたようにも思うし。

■多感な少女:英兒

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英兒はとても少女性の強いセンシティヴな女の子で、恋を観念的に捉えている感じ。
彼女にとってのこの物語は記憶の中の淡くて苦い初恋と友情と、終わり無き憧れの物語なのかも。
林沖に対する想いは、恋と言うより憧れに近く、自分の婚約者が自分でなく自分の憧れている人を愛している(お互い愛し合っている)というのは、彼女にとって寂しいことではあるのだけれど、寂しさ以上にこの男2人の苦悩に同調してしまう部分が感じられる。
そんな英兒の少女性(転じて一足飛びに母性にもつながる?)が、ある種客観的で、観ている者の同調をも増幅させるんですよね(ちょっと狂言回し的な役割もあるかな)。
恋のような友情のような…で、結局、恋より偉大な友情のような。
だから彼女は永遠に林沖と少東の「真ん中」にいる。

 

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どうにもこうにも人間の孤独ってものを感じ入ってしまう作品なのだけれども、なぜか暗い感じはしないです。
それどころか、私はこの物語を観たあと、妙に心が安らぎました。
ラストの現代のニューヨークの風景…華やかにネオン輝く町並み、日常を行き来する人込み…が、すごくいいです(ちなみに音楽も素晴らしい)。あのワンシーンがあったから、この物語が暗くないのかもしれない。

時は流れてゆく。どんなことがあっても。そして想い出は生き続ける。静かな癒しのように。
そんなことを感じさせられました。


about 黄磊


なかなか素敵なはまり役でしたよ。物語のキャラとしては「悩んでばかりいないで、もうちょっとなんとかせい!」って感じですが、お坊ちゃまにはなんにもできなかったんですね…。その弱っちい感じもまた魅力、ってことで(笑)。
さっそく萌え画像オンパレード。

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洋行帰りの御曹司、という役がハマってます。仕立てのいい背広に柔らかい物腰。おそらく一目で彼のことを好きになってしまったであろう林沖のキモチもよくわかる(笑)

育ちの良さそうな、押しの弱そうなボン。ちょっと頼りない王子様光線出しまくり。

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この繊細、かつ、官能的な指使いを見よっ!チェロを弾くこと…その行為はすなわち少東にとっては自己の内面を音に託すことなのだ。だから、その弾いている姿はとても切ないのだよぅうるうる。演奏曲はバッハの無伴奏チェロ組曲第一プレリュード。この映画を見て以来、チェロ曲にハマってしまって(笑)最近ではバッハのチェロ曲は私の一番のBGMとなっております。

この映画では少東の手、というのが印象的に描かれています。その指先に、彼の想いがいっぱい溢れている。ま、実際どこまで本物の黄磊の指なのかは定かでないわけだが(指遣い、かなり上手いので。黄磊は実際はチェロ弾けないと言ってたし)そういう舞台裏的なことは気にせずに。

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こちらが一番お気に入りのシーン。林沖恋しさにチェロを撫でる少東であったーうるうる。せつなさ大爆発です。

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でたー。お得意の自転車2人乗り。どうしてこんなに自転車が似合うのアナタ。
    背広姿で自転車2人のりするっつー、私のツボ直撃の素晴らしいシーンです。
後ろに乗ったレネがとっても楽しそうで、リラックスしててそれがまた羨ましいのであった。
レネと黄磊の2人が醸し出す空気というのは「恋人」でなく、こうした「トモダチ」みたいなのがとてもよく似合うなぁ~と思う。

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ぶかっこうにテニスもする。何かと必死で戦っているような。しかし腰抜けであるような。運痴はマジなのね。

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風呂にも入ってるぞ。サービス・ショットっす。でも、ちっとも色気はないですね。ホント、ただ「風呂入ってる」って感じ。でも、ここに愛しい林沖がいきなりやってくるのです。そのシチュエーションにはドキドキ。


そしてラブシーンはこんな感じ。

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「きれいな手をしてる…」
と言ってゆっくりと手を握る林沖。唇も近づいてくる。唇ぅ~緊張~あと5センチ♪(←って歌、知ってます?昔、森尾由美が歌ってたんだけど。誰も知らないか。)次第に表情が緊張でカタマってゆく少東。ああこの後どうなるんでしょう、2人はっ!

■おまけのマヌケ:

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どこぞで見かけたポスター。これに使われている黄磊の写真って、この映画と全然関係ない。ドラマ『人間四月天』の徐志摩ですわ。

そりゃ、台湾で黄磊といえばイコール徐志摩なんだろうけどもさ。
明らかにレネも違ってる。英題まで違うがな。いいかげんですなぁ。トホホ。