夢の続き

なんとなくつけっぱなしにしていたTVから、ふと、ものすごく「懐かしい感じの」音楽が流れてきて、アタシは掃除の手を止めてブラウン管に見入ったのでした。
日清のカップヌードルのCMだった。香港風みそ、っての。
坂井真紀がうっとりと香港の夜景をバックに広東語でカレシと会話しながらカップ麺をすすってる。ああ~なんてロマンティックなんでしょう~と思ってると、いきなり百万ドルの夜景は東京(?)のごみごみしたアパートに変わり、目の前にいたかっこいい彼氏もホンコン(130Rの蔵野)に変身しちゃってる、っていうオチ。

私ね、こんなお馬鹿でクダラナイCM見ながら、イキナリ泣いちゃったんですよ。
TV見て泣く、なんてのはアタシの場合ほとんど日常茶飯事なんですが…バカみたいだった我ながら。だってたかがCMでねぇ。それも蔵野のさぁ(笑)。
それというのも、このCMに使われてる歌がねー、もう…何って言ったらいいだろう?私の憧れた、かつてのホンコンそのものなんですよ。言葉では上手く説明できないんだけど。
フェイ・ウォンだ!」って、最初は思ったのね。
曲調も歌声もフェイにとてもよく似ていて。でも、かすかに違う。
それに、フェイの曲はわりと知ってるのだけど、この曲、微妙~に知ってるようでいて知らないんで…で、調べてみたらやはりこのCMのために書き下ろしされたオリジナルの曲でした。歌っているのは大陸の歌手、阿麗という人。
でも、ここまで「香港風」を的確に表現できるCMディレクターって、スゴイわ!と感動しちゃいました。

たった何小節かのメロディで、何年も前に抱いていた息苦しいまでの「恋しい街」の面影がぶわーーっと浮かんできたのです。
恋しくて恋しくて…でも、行けなかった憧れの場所。
そこを「聖地」とまで呼んでいた時代の、あの空気感。
私は九龍に空港があったその古きよき時代に…私がいちばん香港を愛していた時代に、とうとう一度も香港に行くことはできませんでした。ただその場所は夢の中にだけあった。
明星迷の中には自由に香港や台湾にさっと旅行に行けちゃう人が多いけど、そうでない人もいる。私は「そうでない人」だった。まるきり「できない」のではなかったのだけど、あえてそうしなかった。その頃の心境を語るとなると一昼夜かかりそうなほどですが…それほどの思いを抱いてそう決めたことなので、今も後悔はありません。
おかげで「香港明星花花街市」みたいなサイトも生まれたわけだしね(^^;;。行き場を無くした「香港恋しい」の思いを、私はあそこにぶつけてたようなトコあるので。

それでも。
「片思いのまま離れた」相手はいつまでも懐かしいのです。
あの頃の(と言いながら当時もすでに「後追い」だったんだけど)例えばアニタ・ユンの映画とか、フェイ・ウォンの歌とかに接すると、私は途端に当時の気持を思い出してしまうんです。恋の想いそのものの「エッセンス」だけ思い出しちゃう。だからぐわーっと息苦しいほど胸に迫りくるものを感じちゃうんですよね。

てなわけで、昨夜は本当に久しぶりにフェイのアルバムを聴きながら眠りました。
96年の「楽楽精選」。何度聴いても素晴らしいベストアルバム。

 

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でも、これももう何年も聴いてなかったんです。もう長いこと、私はフェイの歌声さえ忘れていた。
私にとって「あの時の」香港は、いまはもう地の果てほどに遠い場所。記憶に焼き付けることもなく、ただその想いだけが「心の記憶」の中にあるだけの、夢みたいな場所。
でも、その「心の記憶」は、こうしてフェイの歌声の中に永久に生きているんだなぁなんてことを感じました。
これこそが「アタシの香港」だった。
永遠に色褪せない夢の続きが、ここにある。