「無間道」

 

 2大スター、2大名脇役の磐石ぶりでお届けする「香港映画らしい香港映画」。でも、ジョン・ウーと違ってコテコテではなく、そこはかとなくオシャレな感じ(あくまでも「感じ」)。
本年度金像7冠を(σ・Д・)σゲッツ!した今こそ旬の香港ハードボイルド映画。
これで我らがトニたんは4度めの影帝に輝きました~ごんへいさーい。
そんなお祝い気分で、ずーっと気が進まなかった(爆)本作をどうにか見てみる気になったのでした。いや、気が進まなかったのは単に題材の問題ですけどね。こういった黒社会系モノってニガテなの。もうこれだけで香港映画ファンとは言えないのかもしんないけどアタシってば(^^;。

んでもこの作品、わりとよくできてるーと思ったし、ストーリーも複雑になりがちなものをきれいにまとめてあって観やすかったので、楽しめたのですが…こ、これってどう見てもアンディの映画じゃないの??
どして偉仔が主演男優賞獲ったんだろ?…ってな疑問がふつふつと。
いや、前々からそんな噂はちらほらと聞いていたんですけど…今回思いっきり確認しちゃった。
ストーリーの上での役柄の重要性だけでなくて、演技の質においても偉仔よりアンディの方が精彩があるように思うんですよね。アンディってこういった汚れ役(とは単純に言えないけど)で、ここまで深みを持たせた役ってあまり演じてないんじゃないですか?アンディの映画、いちいち観てるわけじゃないからわかんないけど、これ、すごーくイイです。
偉仔以上に「目で演技」してるし!これで主演男優賞獲れないってのはどうだろう。

反面、偉仔は全くもっていつも通りの偉仔です。確かに演技は上手いけれど(いつだって上手い。ほほほ。)、でも、ものすごーく既視感に溢れてるわけですよ。スタンダード偉仔。「ハードボイルド」がかぶってる、っても言われているようですけど、まさにそれ。でもって、あの作品(「ハードボイルド」)こそ偉仔が主役だったのに。くそー。って過去をほじくり返しても仕方ないけど。あん時の禍根で金像ってば偉仔に影帝乱発してるんじゃあるまいね?(笑)

それにしてもストーリー自体は本当にありがち、っていうか…まさに香港映画の真骨頂、みたいな感じ。うー。やっぱり個人的にはシュミじゃないよ(^^;。

黒社会で子飼いになった劉健明(陳冠希)は、ボス(曾志偉)の指示で警察組織に潜入。やがて情報科の刑事になった彼(劉徳華)は、組織に警察の内部情報を流し続けるのだった。
一方、陳永仁(余文楽)は黄刑事(黄秋生)の指示でボス(曾志偉)の組織に潜入し、10年経って(梁朝偉)いまや幹部という立場になっていた。こちらも組織の情報を警察に知らせ続けている。
真逆の立場の二人が、互いに内部情報を流すもんだから、やがて両方の組織に潜入スパイがいることがバレてしまい、その存在を探し出すための試しあい騙しあいが繰り広げられ…というストーリー。
ね?ありがち。

でも、いままでの潜入捜査官モノとちょっと違うのは、
1)映像がスタイリッシュ
2)脚本が簡潔
3)アンディの演技が巧い
ってなところかなーと、個人的には思いました(笑)。

それとね、陳冠希の存在感がとてもよかったです。
演技とは言えない演技しかしていないのだけど、あれは人選が良かったのね。存在がいい!
どっからみても育ちの悪そうな坊ちゃんで(笑)やけっぱちな野心のある目をしてて。あれが大きくなってあのアンディになるんだーと思うと、すごくその人物像が具体的に浮かぶんです。
彼が途中で欲しいものを変えてしまうのもよくわかる。あまり苦悩している感じでもないのも。彼にとって、全てが上昇志向の中で行われているんですよね。だから苦悩していない。肝が据わってる。

その点、余文楽はダメねぇ。全然偉仔に似ていないし。
顔が似ていないだけでなくて、オーラが似てない。だから陳永仁というキャラに整合性が出なくて、結局、曖昧な淡い色合の個性しか見えてこない。
つか、そもそもこの陳永仁って、ただ動かされていただけ、そして苦悩していただけ、って感じの役になっちゃってるんですよね。
彼自身が何を考えて、どう現状と戦っているのか?はあまり見えてこない。ケリー・チャンとのちょっとした交流くらいではこの人の内面を描くには足りませんよね。もうちょっと有効なエピソードは入れられなかったものか?と思う。「ハードボイルド」で北極の話をしたり、折鶴を折ったりしてたじゃない?ああいうエピソードでいいのにね。ほんの小さな。でも、それがあるだけでぐっと人間的な幅が想像できる様になる…ってなエピソードが欲しかった。
でも、やっぱ余文楽じゃダメなのかも(こんな言い方じゃ、みもふたもないですが(^^;。)。
もっと、温かみのあるセンシティブな感じの青年とか…いなかったのかなー、なんて思います。別に余文楽の演技が下手だとかではないですよ。キャスティングの問題だと思う。こんなんも主観だけど。

この作品は「香港版」と「ワールド版」の2種類の違ったエンディングがあるのですが、これに関しては断然香港版のほうがいいです。
2つの差異は最後の3分間ほどにすぎないのですが、その3分があるのと無いのとでは作品が秀作になるか凡作になるかくらいの差がある。
これはちょっと目からウロコでしたね。
たったあれだけの違いなのに、物語がコロッと変わるんだよ、っつーマジックを目の前で見せてもらった気分。
ワールド版のラストは、ものすごくドライです。登場人物の内面に関して想像の余地が無い。ありがちな話を、ありがちなまま終わらせている感じ。
でも、香港版のラストは、アンディがこの映画の主役だったのだ!と目の前が開けるような気分になる。アンディの内面の屈折や変貌やそのズルさや悲しさまでを一気に描いて、そこまでの1時間30分をガラッと変えて見せる。
2つを見比べてみて初めて見えてくるものもあるので、見比べられる方は必見です。

ああ…それにしても最佳原創電影歌曲ってのもな(笑)。単にアタシのシュミじゃないだけか(^^;。トニたん&アンディのデュエットはものすごく嬉しかったですけどね。でも、この二人ではあまりにも…以下自粛。

蛇足ですが「無間道」とは、地獄の中の地獄で、一度入ったら抜け出られないいわゆる「無間地獄」ってやつだそうです。ガクガク。こんな暗~い映画が流行る香港って?
なにはともあれ(若干、棚ボタ臭いけど(爆))偉仔、影帝おめでとう(^-^)v!