「ファインディング・ニモ」

心配ばかりしている親への心強い応援歌。

ファインディング・ニモ (吹替版)

ファインディング・ニモ (吹替版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 この映画は今現在の私へ、とても切実で貴重なメッセージをくれました。
観てよかった!
なんだかちょっと肩の力が抜けて元気が出ました。
これねーディズニー(ピクサー)のアニメなんですが子供向きってわけではなくて、すごく親向きな作品だったと思う。
却って子供にはこの映画の本質ってわからないんじゃないかな?
わからないなりに、ちゃんと子供は別の楽しみ方で楽しめるようにできてるし、もちろんそれもこの映画のもう一つの顔なんですが、この映画が楽しいだけのものではなく、力強いメッセージを含んでいるってことに気づき、共感し、勇気付けられるのはそれなりに親としての弱み(?)があるからなんだな、と思いました。

ピクサー(この映画の製作会社)のスタッフには親である人が多いそうですが、きっとこの作品のメッセージは彼らの実際に抱えてたことのある悩みだったのだろうと思う。
悩んで、迷って、気づいたことをこうした形で表現してくれているような気がします。
だから今現在そんな悩みの真っ最中にいる立場の人間にとって、とてもリアルに心に響く。子育ての先輩からのステキな励ましの言葉に思えるの。

私はまるで主人公のマーリンと同じです。同じタイプの親。
マーリンのニモに対する口癖は「海は怖い」「お前にはまだ早い」っての。
これって私が毎日のように娘に言ってる言葉と同じだ。
「外は怖い」「あなたはまだ赤ちゃんなんだから」って。
臆病な親はこうして子供をみくびっている。
私もしょっちゅう人に言われている。
「危険だからといって子供に何もさせなきゃなにもできない子になっちゃうよ?」と。それはドリーがマーリンに言った言葉でもある。
そんなのわかってる。でも、怖い。大事な大事な我が子を危険な目にあわせたくない。
冒険が大事なこともわかってるけど、冒険に出ないことなんかどうってことない。
それより、冒険に出かけて戻らなかったら…と思うと、やっぱりこの手は離せない。
マーリンもずっとそう思っていた。
そんなマーリンを見てると、スクリーンの向こうにまるで自分がいるようでした。
過保護で、心配性で、子供に冒険させるのを怖がり、先回りして手助けをしてしまう親。でも、それって絶対に子供の生きる力を阻んでいるよな…と自覚してもいるし、このままじゃダメだよなーとも思ってて…でも、やっぱり心配で目が離せない、という(苦笑)。

この映画はそういった全ての「怖がりで過保護で心配性で子離れのできない親」への叱咤激励の応援歌です。「子供の力を信じてみようよ!」「手を出さず見守ってみて」って言ってくれている。
「まず勇気を出さなきゃいけないのは親であるあなたの方なんだよ」と。

子供の側からすると、さらわれてしまった自分を命がけで探しに来てくれる親の姿に感激するお話なのかもしれないけど、親の側からするとそんなのは当たり前の話で、感動でもなんでもないもんね。
そりゃ子供がさらわれたら当然探しに行くに決まってますし、ただただ必死で何でもできちゃうよ。それが親ってもんです。
その行為と「愛」って言葉はどうもしっくり馴染まない感じ。
そんな言葉、入る余裕もないからかな。
でもねー、逆に子供にとっては、やってみたいことを「危ないからダメ!」と言われたり、「君にはまだそんな力は無いんだから」なんていつまでも赤ちゃん扱いされたりするのって、きっと面白くないんだと思うけど、実際はそれこそこっちは「だって愛してるからだよ!」って声を大にして叫びたかったりするんですよね(笑)。
親が「愛」って言葉振りかざすのってそういうトコだったりする。
エゴだろうけど、そうなんだもん。で、子供はそんな親の姿にはうんざりする、と(笑)。
愛とはかくも食い違うんだよねぇ。
いわゆる「愛」なんて言葉でくくられるものってホントは愛じゃないのかもしれない。
何かのエクスキューズの為に、そんな言葉を使うのかもしれない。

ニモは障害を持って生まれてきてる。
ママや兄弟を災難で失ってもいる。
だから余計に父であるマーリンは過保護で心配性になる。
珊瑚礁の中から出ない一生を、そうして怯えながら生きてゆくはずだった。
子供に冒険もさせず、旅にも出さず、ただ小さなイソギンチャクの中を出たり入ったりして、寿命が終わるまでそこにいるはずだった。
でも、アクシデントが起きてしまったことでマーリンは変らざるを得なくなる。
ゴーインに自分を奮い立たせ、めまぐるしい世界に飛び出して行ったときから、マーリンの成長の旅が始まる。
その旅はマーリンにいろんなことを教えてくれる。
この世は広いこと。海にも陸にも空にもあらゆる生き物達が生きていること。他者と協力し合ってこそできることがあるということ。怖れてばかりいては前に進めないこと。
怖がっていないで飛び出してしまえば案外何とかなるのかもしれない、という実感って、やはり心を成長させるものなんだろうと思う。
そういう積み重ねってのは無形の財産でしょうね。困難を自力で乗り越えた経験が、結局は生きてく上でのいしずえになる。
「可愛い子には旅をさせよ」という言葉があるけど、旅をするべきなのは臆病な親もまたそうなのかもしれない。

やっぱりこういうテーマの映画を作らせたらアメリカって最高ですね!
とことん前向き。
生きるというのは人生を謳歌することだ、と彼らは明確に思っている。
そのためには冒険だってするし、出会いや別れに怯えたりすることもない。
西へ西へと進んだ時代からのフロンティアスピリットってのがあんのかなぁー。すっごく強いよね。そして私はそういうのをやっぱりとても欲しているんです。憧れている。
さぁ、顔をあげて進もう!と、背中を押してくれるものを待ってるようなトコある。


私が観たのは吹き替え版でしたが、これはもう~傑作でしたよ。
木梨憲武の演じる臆病で悲観主義的なマーリンと、室井滋の陽気なドリー!ピッタリ合ってた。特に室井滋は可笑しかった~。まるでご本人さんが実写で演じてるようなハマリ役。
このドリーもちょっと障害をもってるんですが(重度健忘症)、ちゃんと一人で生きている。のびのびと、楽しく。ドリーの存在って、だからちょっと見てて涙ぐんじゃいそうなケナゲな感じでね…オシャベリでうるさいんだけど(笑)、とてもいとおしいのです。


最初の5分と最期の5分、号泣しました。
最初は悲しくて。最期は感動で。
この観客の反応が、そのままマーリンの心の変化なのだなーって感じ。
アニメーションの技術の素晴らしさは今更言うまでもなく。
珊瑚礁の熱帯魚、ってのが主人公ですから色彩がさらに活きてました。題材選びの段階から、持っている技術効果を生かす最高のシチュエーションを持ってきたってのがわかる。動きも完璧。
ラストの音楽もとてもステキでした。
人生は素晴らしい、と胸に迫る歌。