「ブロンドと棺の謎」

最大のハリウッドスキャンダル、実録モノ。

ブロンドと柩の謎 [DVD]

ブロンドと柩の謎 [DVD]

  • 発売日: 2009/11/24
  • メディア: DVD
 

 この映画はまず観る人を限定しますたぶん。
映画としての見どころが、前知識の有る無しにわりと関わるように思えるんですよね。
つまり映画的にはちょっと不親切というか、題材になってる事件そのものをわかってることが前提になってる気がする。
かつての天才・ボグダノヴィッチの新作のわりにはあまり評判良くなさそうなのもそういったところが原因かもしれません。


試しに「オネイダ号」で検索かけたら、見事にこの映画関係のものばかりでてきた。
この事件、日本ではここまで知られていないとは。
そんなじゃこの映画、集客力もたないってばよ。スターが出てるわけでもないし。(でも劇場公開してるんだよね。アメパイ3さえ劇場公開しないこの国が)
こんなようですから監督の宣伝文句(「殺人事件の被害者が誰であるかは、決して明かさないでください。」っての)にも納得だ…と思った次第。


この「被害者」って、アタシゃ誰でも知ってると思ってたんだけど、そうじゃないのね。
この事件はチャップリンが関わっていたので、かつてのチャップリン迷のアタシとしては知っててあたりまえ、興味しんしんであたりまえ、ってなだけなんだけど、どうしたってこれ、登場人物のキャラわかんなかったら全然面白くないと思うんだよねぇ。

 

1924年11月、新聞王:WR(ウィリアム・ランドルフ)・ハーストの所有する小型豪華客船「オネイダ号」で、ハリウッドセレブを集めたパーティーが開かれた。
そこにいたのはハーストを始めとして、彼の愛人で女優のマリオン・ディヴィス、喜劇王チャーリー・チャップリン、西部劇の大物プロデューサートマス・インス、その愛人で売り出し前の女優マーガレット、作家のエリノア・グリン、毒舌コラムニストのルーエラ・パーソンズなどなど。
賑やかな狂乱の宴が繰り広げられる中、客の一人が不審死をとげ、ひっそりとその場からいなくなった。
彼に何があったのか?彼の死の真相は?

 

これがいまだに闇の中であるハリウッドスキャンダル「オネイダ号の謎」であり、この作品はその一部始終(だとたぶん大衆が信じている仮説?)を時間軸に沿って描いてます。
事件は本当にあったこと。
でも、犯人は誰だかわからない(実際は)。
それなのにこの映画は犯人を大胆にも名指ししていて、それが当然のように某人物ですので(^^;)、「謎」とはいえ、謎解きにはなってないです。
が、事件に到るまでの心理描写や人間関係はとても緻密に描かれていて、ごく自然に結末への道のりを辿ることができます。
「誰が彼を殺したか?」ではなく「彼はなぜ殺したか?」という意味での「謎解き」と言えば言えるかな。(それにしてもあまりに噂どおりなのでやっぱり新鮮味はない)

事件的な因果関係などではなく、当時の空気というか、ファッションとか音楽とか風俗を「感じたい」人には極上の資料的ゴージャス感はあります。
ジャズエイジ文化が好きな人にはオススメ。

 

チャップリン役のエディ・イザードはチャーリーファンの私としてはもう、何も言葉がないです。
醜悪。
いくらなんでもあれは違うでしょう。
そりゃ確かにチャーリーは色惚けだけど、もうちょっと、なんというか、ロマ男なんですよぅぅ。
ハースト役のエドワード・ハーマンも顔はクリソツ。愛人が心変わりするかも、という焦りや不安をよく演じてました。痛々しいほど。
一番良かった(って言うか、唯一良かった)のはキルスティン・ダンストの演じたマリオン・ディビス。本物のマリオンの方がきっと愛らしいけど(笑)、キルスティンの30年代風なたたずまいは貴重。

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ちなみに、このテのハリウッドスキャンダルをワクワク読ませてくれるのはこの本がオススメです。