今年のtbsチャンネル(CSのね)は、正月早々「向田邦子の新春ドラマシリーズ」一挙放送!っつー感涙モノの特集を組んでるのです。
このドラマシリーズは以前から私の一番好きなドラマシリーズで、放送したものは全部見てるのですが、録画をし損ねたものやビデオを無くしてしまったものも数本あって、いつかまたちゃんとまとめて見てみたいとずっと思っていたものでした。
ここまでの一挙再放送は初めてなので、すごく嬉しい(*^-^*)。
厳密に言うと、私の場合は向田邦子の作品世界というよりは久世光彦さんのそれがとにかく大好き!大ファン!なんです。
もちろんそれは著作を含め、久世さんの手がける仕事全般に対して、です。
久世さんが生み出すものというより、彼が好んで描き出すものにすごく反応しちゃうというかね。要するに私は久世さんと「趣味が合う」んだと思う。すごくすごく。
戦前の池上辺りで母と娘3人が枝折り戸のある小さな庭がついた閑静な家に住んでいる。長女は家事手伝い、次女は出版社に勤めてて、三女は女学生。
この三女が物語の語り部になっている。
大人になった少女の回想が語るのは、母の秘密を垣間見たり、曰く付きの男が長女に絡んだり、次女の恋人が左翼で特高に追われたりという話。
大抵はそんな感じ。わりとワンパターン。でも、いちいちそれがいい。
家屋や着物や小道具も、流れる音楽も、どれもいい。
なによりもいいのが、あの頃の女の世間での立ち位置を、ちょっと夢見てるような感じで描いてるトコです。
久世さんのエッセイや書評は本当にうっとりするほどステキな世界へのキーワードで満ちていますし、ドラマではそれが実際に映像や音楽で出てきます。
でも、私の勝手な想像ですが、それらは久世さん自身の憧れであり、ご本人が持っている資質ではないと思うんですよね。
でね、そういった「憧れが遠い」感じが私にはとてもしっくりときて、嬉しいのです。
憧れつつも、その世界から遠くにある自分がいて、だからこそ尚更、郷愁や浪漫を感じてしまう心を久世さんはご存知なんだ、と。
実像とはまたちょっとズレてるのですが、そのズレかたが好きで、感激しちゃうんですよね。
久世さんの小説を読むとそれはさらによくわかります。
浪漫がちというか大分甘すぎなところがあって、現実からは遠いお話が多くて。
とくに女性像が甘い(笑)。
でも、そんな「ハズレ」っぷりも、この人だったらこう感じるんでしょう、というところにちゃんと着地している。見知った仲の人の行動のように、よくわかる。その「虚」なる女性像は、私の心にもちゃんとあるのです。
そしてそれは向田さん自身にはたぶんなかったものだと思うんです。
向田さんの描く女性は、まぎれもなく本物の女性でしたから。
というわけで、このドラマシリーズは「向田邦子の~」とは言いながらも、その時代臭や大まかなストーリー、キメ台詞以外は向田さんの空気はあまり濃厚でなくて、どう考えても「久世劇場」であり、だからこそ私はこのドラマのファンなのです。