内堀弘・著(晶文社)
すごいレベルの高さ(大汗)。
内容は古書店主の古書探訪記、古本を巡る至福とウナダレの日常を書いたもので、その気持ちの上がり下がりやエピソードの数々は読んでいて楽しいし、なるほどそうなのかーという、働くおじさんを見学するような面白さもあるんですが…とにかく言葉が…そこから広がる、というキーワードとなる様々な言葉(かつての出版社、作家、作品名などなど)が、80%ほど未知のものでして(爆)。そこにいちいちつっかえてしまう。
この世界のマニアだったら楽しめるであろうことを私はわけがわからず楽しめない。
悔しい。
しかもこれでも私はモダニズムに多少なりとも興味がある部類の人間なわけで、そうでない人よりはいくらかは話が通じると思えどもこのていたらくです。
アカデミズムというのは遠い。蜃気楼のよう。
ああ、自分はなんてバカなんだろう、と思う。無知蒙昧。
でも、バカは知ることがたくさんある。したがって聞かされることがいちいち新鮮なのだ(と、開き直るしかもはや術ナシ)。
モダニズムの芸術家達の人間関係など、とても興味深いものでした。著者の、送る側(出版側)の人間への眼差しも。
マヴォのちょっとした関係者の中からカジノフォーリーに流れた者やバウハウスに流れた者もいたことも知って、時代の雰囲気がふわーっと目前で広がったりもした。
自分の身の丈で楽しいと思えたのは、村山知義の今まで見たこと無かった写真(しかも萩原恭次郎や北園克衛たちと写ってる集合写真!ぎゃー。悶絶。)が掲載されていたことです。こんな無知な娘でもこの写真にはドキドキする。
「萌え」の力は知性への母体となりえる。結局はそういうことの積み重ねなんだろうな。情熱の量というか。だからこそ、古書の森を深く深く探索する古書店主の姿が羨ましいのかもしれない。その尽きない情熱の熱量が。楽しそうだなぁって思うんだよね。貧乏らしいですけど(^^;)、ステキだ。
内堀さんがひそかに柳瀬正夢と尾形亀之助の特集を組んだ目録を作ろうと思っていた、という話にもドキドキしました。
スゴイなぁ。柳瀬正夢ファンの一人としては、こんなの出たら(買えないから)ちょっと悔しかったりもするんだろうけど、目録だけでも見たかった。内堀さんの文章も読みたかったなぁ。いつか実現するといいですが。
あ、それから。内堀さんが日月堂さんを好きだとおっしゃってたのが嬉しかったです。
日月堂さんは今私が一番好きな古書店なのです。お金ないので買い物は一度、村山知義関係の本を買ったことがあるだけなんですが、HPはしょっちゅう覗いています。
センスのよい、欲しい本ばかりがあるお店。
こちら