「海猫」〈上・下)

 

 

谷村志穂 海猫 上下巻セット (新潮文庫)

谷村志穂 海猫 上下巻セット (新潮文庫)

  • 発売日: 2004/09/01
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 谷村志穂・著(新潮文庫


入院中、唯一読んだ小説がこれでした。
不自由な肉体を抱えていても、小説の世界に一旦没頭してしまえば、舞台となっている北海道の海辺の町にいるかのような気分になれて気が紛れました。
谷村さんの小説は初めて読んだのですが、文章がわりと拙い感じ(爆)。
っていうか、これ、編集者がどうにかできるのに、というあからさまな拙さもあって、なんというか、ちょっと悲しかったです。編集者の責任じゃないの?って感じるところがいくつもあったんで。
とはいえ、谷村さんは稀有なストーリーテラーです。その意味で、小説家たりえる人なんでしょう(だからなおさら文章のちぐはぐさが惜しいんですが)。
作品の世界はしっかりと眼前に広がってゆく。登場人物の姿も、くっきりと見えている。物語も面白い。だから、ドラマを見ているように面白くスイスイ読めました。

物語は昭和30年代、北海道の昆布漁の町・南芽部と函館で繰り広げられる愛憎劇、と、その娘世代の物語…ってな大河小説風味のあるものです。
とにかく、土地の匂いがすごく濃く物語世界を包んでいて、「ああ、こういう小説が読みたかったのよ」という感じ。
なんか、最近は日本の土着の風景の中で人間同士が絡み合う物語とかってのが一番読みたかったりするんですよね。濃厚に風景が描かれているものが。
近頃は感情にばかり重きを置いていて、そのくせ深みまで掘り下げていないで単に現象に対する反射だけを描いたような「感覚小説」ともいうようなものが流行ってるみたいですけど、そういうのってツマンナイ。
人間の感情が動くところには、生き生きとした風景がなければ。
物語の登場人物を取り巻く風景が濃厚であればあるほど、感情的なものや官能的なものが臨場感を帯びるんだもの。
例えば小説でなくて評伝なんかでも、その人の育った風景にこだわって掘り下げている著者のものは好感が持てるし、面白い。

で、これ、映画化されて来月公開されるんですよね。
そのキャストを知ってたので、完全に当てはめて読んでました(笑)。配役はなかなか合ってます。主人公はもう、伊東美咲しかない!みたいな感じだし、南芽部の兄弟もイメージぴったり。主人公の弟はちょっとイメージ違うかなぁ。
公開されたら観にいきたいなぁ。行けるかなぁ。11月13日公開だそうです。
個人的に蒼井優ちゃんに期待してんのだよねー(*^-^*)。ミムラもいいなぁ。
ミムラが演じる役(伊東美咲の娘・美輝の役)は、この物語の中で一番好きな役です。