「樋口一葉「いやだ!」と云ふ」

 

樋口一葉「いやだ!」と云ふ (集英社新書)

樋口一葉「いやだ!」と云ふ (集英社新書)

  • 作者:田中 優子
  • 発売日: 2004/07/16
  • メディア: 新書
 

 田中優子・著 (集英社

樋口一葉の作品を分析、解説した傑作です。
っても、まだ読みかけです。3分の2くらいまで読みましたが…これはねースゴイ解説書よ。かなりオススメ。

樋口一葉ってお札の顔になってるわりには、その作品を読んだことのある人が少なすぎるような気がしませんか?
それもそのはず、彼女の作品は(現代人には)あまりにも解読が難しい。正しくその世界観を把握できる人は稀だと思います。「稀だと思います」ってのは、この田中先生の解説を読んではじめてわかったわけですが。

本当の馬鹿は「自分の無知さえ知らない。」「自分が何を知らないのかを知らない。」とよく言いますが、まさしく樋口一葉の作品に対する今までの私はそれでした。私だけじゃない、多く書評など書いてる人の中にさえこのテの輩がたくさんいるように思います。
彼女の作品を、主にその文章の体裁が難しいとは思いながらも、文章以外は全部こっちの感覚(つまり平成の御世の感覚)でとらえられると無意識に思ってる人が多いんじゃないでしょか。
それ、違うんですよね。
樋口一葉の作品を理解し、その本質を知り、真に楽しむには、江戸~明治期の庶民の常識や文化や感覚をある程度は理解することが必要不可欠なんです。それは当然ながら現代の感覚とはズレがある。
要するに教養がないと読みこなせないんですよねぇ。教養ったって、アカデミズムではなく、かつては常識だったことばかりです。

日本人はあまりにも昔のことを忘れすぎてしまった。伝える人も少ない。だからそこにノスタルジーの持ちようが無く、「イメージ」さえ掴めない。ほんの百年前のことが、もはやすっかり霧の彼方。
…ってことを、この本を読んで痛切に感じました。
…ああ、遠いなぁ…と。
その遠さに気づき、差異を知り、思い込みに修正を入れ、ほんの少しだけでも近づけたような感覚になれることは、でも、とても嬉しいものです。
こういう導き方をしてくれるなんて、さすが先生、頼りになるなぁという感じ。


田中先生は私の恩師です。憧れの先生でした。サボり魔の私が先生の授業となると熱心に出席して、しっかり「A」の成績とりました。
不本意でしぶしぶ入学した自分の母校を好きになれたのも、田中先生の影響が大きいです。先生がすごく母校を愛してらしたことで、なんだかこっちまで自信がもてたんですよね。
最近はTVのニュースショーなどでちょっと過激な(?)発言をなさったりしてて、ハラハラしたり心配したりもするのですが個人的には先生には幅広い論客というものよりも、一隅を照らす研究者であって欲しいと思ったりしてます。
だってそれはやはり先生しかできないものだから。こんな素晴らしい「文学啓蒙書」を書ける人はそうザラにはいませんよ。